まるでCGのような現実世界 タ・プローム
「アンコール・ワット」や「アンコール・トム」に並ぶ人気を誇るタ・プロームは、他の遺跡群とは一線を画しており「これこれ、これぞ遺跡だよ!」と思わせてくれるでしょう。
タ・プロームへは「アンコール・トム」の「勝利の門」から向かうルートが一般的です。「勝利の門」から近い西口で降ろしてもらい、東口で待っていてもらえばまっすぐ進むだけでいいので楽です。
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ファンタージのような現実
ファンタジーの世界に迷い込んだかのような不思議な光景はまるでCGで作ったかのよう。しかしCGではなく正真正銘現実に存在する光景です。
人工的には造り得ない、しかし実在するゲームのワンシーンのような世界は訪れるの者を非現実的な空間へと引きずりこんでしまいます。
巨大な菩提寺
タ・プロームは「梵天の古老」と言う意味で、ジャヤヴァルマン7世が母を弔う菩提寺として建立した仏教寺院だそうです。
「タ」は「おじいさん・おばあさん」という意味になるので、お母さんの為に建てたこのお寺の名前は「梵天のおばあさん」と訳するのが相応しいのかもしれません。
東西1000m、南北600mの広大な敷地に三重の回廊を持っていた寺院には、かつて僧侶を中心に1万人以上の人々が暮らしていたと言われています。
樹々に浸食され続ける寺院
安全確保や状態保持のため補強はしてあるものの修復はほとんどせず、ほぼ深い密林から発見されたままの姿を保っています。
それがタ・プロームの最大の魅力であり、それがゆえ遺跡の大半は巨大な樹木ガジュマルによって食べ尽くされています。いたるところで建物を押しつぶし、太い根がまるで血管や神経細胞のように遺跡全体を浸食し、養分を吸い取りその存在を乗っ取っているかのようです。
今も成長を続けるガジュマルは当然のようにタ・プロームをさらなる崩壊へと導いており、植物の生命力をひしひしと感じさせてくれます。
年々とその姿を変え続けるタ・プロームは単なる過去の遺産ではなく、今もなお生き続けている遺跡と言ってもいいのかもしれません。
卵が先かニワトリが先か
ジャヴァルマン7世の時代に建立された寺院は短期工事が多かったそうです。タ・プロームも工期が短くもともと壊れやすい脆い造りでした。
遺跡の修復方針について、「樹木は遺跡を崩壊させているのか?いやいや崩壊した遺跡こそが樹木を支えているのでは?」という卵が先かニワトリが先かのような議論が繰り返されているそうです。
しかしこの光景を目にする者にとってはどちらであっても、ただただ自然と時間の作り出した芸術品に心を奪われるのみです。
樹木に飲み込まれ苔の生すガレキを眺めていると、かつてこの寺院に1万人以上もの人々が暮らしていたということが信じられません。淡く深い苔の色彩に滅びの美学さえ感じてしまいます。
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